山の斜面に、黒い花。
初めて見たときは、少しぎょっとしました。まわりの花が白や黄色やピンクの中で、そこだけうつむいて咲く暗い紫褐色の花。それがクロユリです。

こんにちは!登山歴13年、のこのこ山を歩き続けている夫婦ブロガー「ちぃとかめぴ」です。
私たちがクロユリに会えたのは、白山・乗鞍岳・入笠山の3か所です。この記事では、その写真とあわせて、こんなことをお伝えします。
- どこで見られるのか(実際に会えた3つの山)
- 実は「ユリ」ではないという話
- 花言葉が「恋」と「呪い」という、極端な二面性
- 顔を近づけると匂うのは、なぜか
- クロユリの名前がついた山小屋に泊まった話

かわいいというより、あやしい魅力♡ 一度見たら忘れられない花なのよね〜。
クロユリとは?実は「ユリ」ではありません

名前に「ユリ」とついていますが、クロユリはユリ属ではありません。
正しくはユリ科バイモ属の植物です。園芸の世界では「フリチラリア」と呼ばれる仲間で、あのユリとは属が違います。
言われてみると、花の形が違います。ユリのように大きく開かず、釣鐘のような形で、うつむくように咲きます。この控えめな咲き方が、クロユリの雰囲気をつくっています。
| 分類 | ユリ科バイモ属(フリチラリアの仲間) |
| 草丈 | 10〜30cmほど |
| 花の色 | 暗い紫褐色。光の当たり方で黒っぽく見える |
| 花期 | 6〜8月ごろ |
| 生える場所 | 亜高山帯〜高山帯の草地 |
石川県の「県の花」です
クロユリは石川県の郷土の花に選ばれています。白山に多く咲くことから、県民に親しまれてきた花なのだそうです。
私たちも白山でクロユリに会いました。「本場で見た」ということになりますね。
【見られる山】私たちが出会った3か所
実際にクロユリの写真が残っている山を紹介します。
白山|クロユリの本場

石川県の県花になっているとおり、白山はクロユリで知られる山です。
7月上旬の白山で、わたし達はクロユリに遭遇することができました。

白山三回目のチャレンジで初登頂できた帰りにクロユリを見ることができて、ダブルでうれしかったですね~。
乗鞍岳|お花畑で会えます

乗鞍岳では、畳平のお花畑でクロユリを見かけました。バスで標高2,700mまで上がれるので、ここもかなり会いやすい場所だと思います。
ここで、ひとつ面白い話があります。
同じ乗鞍岳に咲くコマクサは、お花畑にはほとんどいません。コマクサは、ほかの植物が生きられない砂と小石の斜面を選んで咲く花だからです。
つまり、同じ山なのに、コマクサとクロユリは住む場所が正反対なんです。
- クロユリ…水と栄養のある草地・お花畑
- コマクサ…何もない砂礫地。剣ヶ峰への登山道など
両方に会いたいなら、お花畑を歩いたあと、登山道を少し登ってみてください。1日で2つの世界が見られます。
コマクサについてはこちら→【コマクサ】どこで見られる?乗鞍岳で会える高山植物の女王|見頃と咲く場所

同じ山でも、花によって好きな場所がまったく違うんですよね。それが分かってくると、山歩きがもっと面白くなります。
ちなみに同じお花畑では、チングルマの綿毛にもよく出会います→【チングルマの綿毛】いつ見られる?花との違いと、家で育ててわかったこと
入笠山|ゴンドラで上がれる山でも

長野県の入笠山(にゅうかさやま)でも見かけました。標高1,955mと、ここまで紹介した山より低い場所です。
入笠山はゴンドラで一気に標高を稼げる山で、山野草の宝庫としても知られています。「高い山はまだ自信がない」という方でも、比較的行きやすい場所です。

入笠湿原は、何度も訪れているけど、出会えたのはこのとき一回だけだったから、やっぱりちょっと珍しい花なのかな、クロユリって。
なお、入笠牧場キャンプ場は営業を終了しています。テント泊を考えていた方はご注意ください→【閉鎖】入笠牧場キャンプ場は営業終了しました
花言葉は「恋」と「呪い」|正反対の意味を持つ花
クロユリの花言葉を調べると、驚きます。
- 愛/恋
- 呪い/復讐
まったく正反対の意味が、ひとつの花に同居しています。これほど極端な花言葉を持つ花も、なかなかありません。
「恋」のほう
アイヌの伝説に由来すると言われています。好きな人の近くにクロユリをそっと置いて、その人が自然に手に取れば恋が叶う——そんな言い伝えです。
黒い花に、そんなロマンチックな話があるのは意外ですよね。
「呪い」のほう
こちらは、戦国武将の佐々成政(さっさ なりまさ)にまつわる伝説とされています。
身に覚えのない疑いをかけられて命を落とした女性が、「立山にクロユリが咲いたら、この家は滅びる」と言い残した——という話です。そして実際に佐々家は没落した、と伝えられています。
※あくまで言い伝えで、史実として確認されているものではありません。ただ、この物語があるからこそ「呪い」という花言葉が残っているようです。

「恋」と「呪い」って、よく考えたら紙一重なのかも…なんて思っちゃった。あの花の色を見てると、なんだか納得できるのよね…。
顔を近づけると、けっこう匂います
ここは、実際に嗅いだ人にしか書けない部分だと思うので、正直に書きます。
クロユリは、いい香りの花ではありません。
写真を撮ろうとして顔を近づけたとき、ふわっと独特の匂いが来ました。田舎暮らしをしている感覚で言うと、発酵が進みすぎたぬか床——そう言えば、伝わる方には伝わるでしょうか。決して爽やかな匂いではありません。
ただし、そばを通っただけで匂うほどではありません。あくまで「写真を撮るために顔を寄せたら気づく」くらいの距離です。群落の中を歩いても、道を歩いているだけなら気になりませんでした。
なぜ匂うのか|ハエを呼ぶためです
この匂い、クロユリにとっては生きるための戦略です。
多くの花は、鮮やかな色と甘い香りでチョウやハチを呼びます。でもクロユリの花は暗い色で、目立ちません。そこでクロユリが選んだのが、匂いでハエなどの虫を呼び寄せるという方法でした。
あの匂いは、ハエにとっては「ごちそうの匂い」なんですね。咲いた直後がいちばん強く、日が経つにつれて弱まるとされています。

「きれいな花には甘い香り」って思い込んでたので、最初はびっくりしました。でも理由を知ると、なんだかたくましくて好きになりますよ。
クロユリの名を持つ山小屋|黒百合ヒュッテに泊まりました

八ヶ岳に、黒百合ヒュッテという山小屋があります。テレビの山小屋特集でもよく紹介される、登山を始めた人の憧れの宿と言っていい存在です。
私たちも、一度泊まったことがあります。
道を間違えかけて、たどり着いた夜
あの日は、唐沢鉱泉から天狗岳に登り、そこから黒百合ヒュッテへ下るというルートでした。
ところが、下山の道を間違えかけました。天候は悪く
濃霧で、視界もよくない。「この道で合っているのか」と不安になりながら歩いた時間は、正直こたえました。
だからこそ、小屋の灯りが見えたときの安心感は忘れられません。
登山道の途中に山小屋があるということの、本当のありがたさを体で知ったのが、あの日でした。ただ泊まって楽しかった、という思い出ではありません。あそこに小屋があってよかった、という思い出です。

天気が悪い日ほど、山小屋のありがたみが分かります。予定どおりに行かないこともあるので、余裕のある計画を立ててくださいね。
ちなみに小屋の名前は、すぐそばの「黒百合平」から来ています。名前のとおり、クロユリが咲く場所です。
見頃と、見るときに守ってほしいこと
見頃は6〜8月ごろ
クロユリの花期は6〜8月とされています。ただし高山植物なので、その年の雪解けの早い遅いで前後します。同じ7月でも、雪が多かった年は少し遅れます。

わたし達は、入笠湿原では6月中旬、白山では7月上旬、乗鞍の花畑では7月下旬に、クロユリと出会うことができたよ♪
採らない・踏み込まない
高山植物は、厳しい環境で何年もかけて少しずつ育ちます。
- 絶対に採らないでください…多くの山で採取が禁止されています
- 登山道から出ないでください…一歩踏み込むだけで、草地は傷みます
- 写真は道の上から…近づかなくても、十分きれいに撮れます
なお、クロユリは園芸用の球根が販売されています。育ててみたい方は、必ずそちらを選んでください。山のものを持ち帰るのは絶対にやめましょう。
よくある質問
クロユリの花言葉は?
「愛」「恋」と、「呪い」「復讐」です。正反対の意味を持つめずらしい花で、それぞれアイヌの言い伝えと、戦国武将にまつわる伝説に由来すると言われています。
クロユリとユリの違いは?
属が違います。ユリはユリ属、クロユリはバイモ属です。花の形も、ユリのように大きく開かず、釣鐘のような形でうつむいて咲きます。
本当に真っ黒なんですか?
正確には暗い紫褐色です。日陰や曇りの日は黒っぽく見えますが、光が当たると赤みのある紫だと分かります。写真を撮るなら、光の向きを変えて何枚か試してみてください。印象がかなり変わります。
匂いは、そんなにきついですか?
顔を近づけると分かる程度です。歩いているだけなら気になりません。ただ、いい香りを期待して鼻を寄せると、けっこう驚くと思います。
登山初心者でも見に行けますか?
行けます。乗鞍岳はバスで、入笠山はゴンドラで標高を稼げます。どちらも歩く距離を短くできるので、体力に自信がなくても挑戦しやすい山です。
→初心者におすすめの登山スポット|ロープウェイ・山岳バスで行ける絶景の山7選
ただし乗鞍岳は一気に2,700mまで上がるので、高山病にはご注意を→高山病の対策と予防|なりやすい人・薬・酸素缶の真実を登山13年夫婦が解説
まとめ

- クロユリはユリ属ではなくバイモ属。石川県の県花
- 私たちが会えたのは白山・乗鞍岳・入笠山。見頃は6〜8月
- 花言葉は「恋」と「呪い」。正反対の意味を持つめずらしい花
- 顔を近づけると匂います。ハエを呼んで受粉するための戦略
- 同じ乗鞍でも、クロユリはお花畑、コマクサは砂礫地と住む場所が正反対
黒くて、うつむいていて、近づくと匂う。褒め言葉ばかりにはならない花ですが、だからこそ忘れられません。
山でその黒い花を見つけたら、ぜひ足を止めてみてください。ただし、匂いを嗅ぐかどうかはご自由に。

ちょっとクセがあるところも含めて、大好きな花です♡ みなさんもぜひ、山で探してみてくださいね!
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